みなさんいかがお過ごしでしょうか?
世の中ではGo Toキャンペーンの効果で、温泉旅館に予約が入ってきているようです。
ボクの知り合いの旅館さんも今回のコロナ騒動で大打撃を受けていましたので、このキャンペーンで少しでも取り戻してもらえたらと思っている次第です。

1年ほど前に湯河原の温泉宿に行った時のことです。
その宿には何度か行ったことがあり、チェックインすると先ずは大浴場に行き温泉に入ります。
内風呂と露天風呂があり、露天風呂は植栽を施した庭風の野外に3~4箇所お風呂が点在している雰囲気のある露天風呂です。仕事柄、週末の泊りは無理なので、もっぱら平日の行動になります。ですので宿泊客の多くは、リタイヤしたご夫婦だったり、女性同士のご友人での旅行だったりといった感じで、比較的年齢層が高いことが多いのです。

その日いつものように露天風呂に浸かっていたら、お父さんと子どもがやって来ました。そしてボクが入っている湯船に2人で入って来たのです。平日に子どもがいるのが珍しく、何かの代休なのかなと思いながら親子の会話をなんとなく聞いていました。その子は、小学5、6年生くらいでしょうか、少し体格のいい感じの子どもでした。「色んな温泉に入ろうよ」とか「今日のご飯は何が出るんだろう」など微笑ましい親子の会話をしていたのです。

湯河原離宮

すると突然その子どもがお父さんに向かって「パパ、何かアメリカンジョーク言ってよ!」と言い出したのです。小学校5、6年生の口からアメリカンジョークという単語が出てきたことに先ず驚きました。そのようなシチュエーションが彼の家であるからなのでしょうか?、たまたま耳に残っていた単語を発しただけなのでしょうか?ボクの頭の中では色んな想像がグルグル回るのでした。
そうすると、また子どもが父親に言うのです。「ねぇ~、小粋なアメリカンジョーク行ってよ!」

『えっ、小粋な…、なになに、どういうこと?』

アメリカンジョークだけでも相当ハードルが高いのに、小粋という江戸文化を知り尽くした銀座、日本橋育ちの老人くらいしか口にしないような単語を、平気で言ってしまうこの子はいった何者なの?この子おじさんなの?そしてこの子のお父さんは噺家さんなの?
お父さんは最初、子どもからの提案を聞こえないふりをしていましたが、何度もせがむ子どもに「アメリカンジョークなんか言わないよ!」と小さな声で反抗的に言ったのです。そりゃそうでしょう。完全アウェイの温泉宿の露天風呂で、知らない人にも聞かれるかもしれない状況で、小粋なアメリカンジョークを言える人は、そうそういるもんじゃありません。すると子どもは、少し寂しそうに「なんだよぉ~~、つまんないの」と。いやいや君、それは酷ってものよ。お父さんを責めちゃいけないよ。そんな無茶な発注はないからね。と言って上げたかったのですが、ボクは密かに心の中で、「りんごが海で溺れています、アップルアップル」とつぶやいていたのでした。それが彼にとって小粋だったかどうかは分かりませんが…、